「大人の味に出会う、クラシックなお店」
CULTURE

My Favorite Classic Food 「大人の味に出会う、クラシックなお店」

いつもはファストフードや定食屋にお世話になりっぱなしだけど、祝い事や特別なデートの時に、さらっと気の利いた店をチョイスできれば一目置かれるもんだ。単に “高いお店” なら食べログを見ればすぐに見つかるけど、知っておきたいのは “クラシックで気の利いたお店” 。入るまでは緊張するけど、そんなドキドキ感も楽しみたい。

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Fujiwara Takahiro

Kizushi

[㐂寿司]

《㐂寿司》のカウンターでお寿司がもっと好きになる。

僕らはいつだってお寿司が大好きだし、回らないお寿司屋さんが美味しいのは知っている。でもそこには、食べ方やマナーがわからないっていうハードルが立ちはだかっていて、なかなかに腰が重い。そもそも職人さんの目の前で食べるのって試されているみたいで緊張するし、お店だってどこを選べば良いのかわからない。だったらまずは、そんな有象無象を包み込んでくれる、《㐂寿司》の暖簾をくぐってみることをおすすめする。

決して敷居が低いわけではないのだけど、歴史ある佇まいがかっこいい日本家屋の曇りガラスの引き戸を開けると、江戸時代にでもタイムスリップしたみたいで何だかほっとする。いわゆる高級店にある緊張感や荘厳な雰囲気はなく、むしろ歴史はあるのに和やかで、粋が溢れていて活気がある。カウンターに座ると「何貫くらい食べますか?」「嫌いなものはありますか?」と大将がさらっと聞いてくれる。あとは握り手に身を委ねて美味いお寿司を食べるだけ。お寿司における永遠の難題 “手でいくか、箸でいくか” 問題についても、「好きなように食べてください。その方が良いから。」と一言。

東京を代表する名店の握りは決して安くはないけど、万人に開かれた雰囲気で本物の握りを頂ける場所は意外と少ない。まずは、お茶をすすりながらランチで頂いても良いし、夜にお酒を飲みながらゆっくりとお寿司を堪能しても良い。ひとしきり食べて足りなかったら、ネタケースを見ながら追加で頼んでも良いし、同じネタをもう一回食べたって良い。

屋台をルーツに持つ江戸前寿司の、自由でスピード感のある雰囲気は、下町らしさ満開で何だか嬉しくなる。人形町でもうすぐ100年、江戸の庶民が愛した粋なお寿司を食べにちょっと足を伸ばしてみよう。

[㐂寿司]

住所
東京都中央区日本橋人形町2-7-13
時間
11:45~14:30, 17:00~21:30(月~金)、11:45~14:30, 17:00~21:00(土)、日祝休
TEL
03-3666-1682

Kamiya

[香味屋]

妥協なき下町の洋食屋《香味屋》の幸せな逸品。

満腹感だけを求めて食事をするのも良いけど、大人になったら満足感も満たしてくれるお店を持っておきたい。お店に入った時、料理が出てきた時、食べ終わってお店を出る時に幸せな気分になれたら、それはとても良い食事かも知れない。

下町情緒が残る東京根岸の洋食屋《香味屋》は、まさにそんなお店。白を基調にした清潔感のある店内は、どことなく特別な気分になる。“下町の洋食屋” と言うのは申し訳ないくらい優雅で、高級レストランほどかしこまっていない。ちょっとしたお祝いにちょうど良い雰囲気は、家族や友達と気軽に足を運べる。ランチタイム、ディナータイム関係なく、いつ行っても通常メニューが頂けるのは下町ならでは。

オープンからある看板メニューの「ビーフシチュー」は、一度は食べていきたい逸品。それに並ぶ人気メニューの「オムライス」は、芸術品のような神々しいルックスが素晴らしい。気を衒ったことをせず、どこまでもクラシックなオムライスを妥協なく作っている。ご飯の旨味を活かしたチキンライスを、半熟の玉子で丁寧に包んだ黄金の一品は、テーブルに運ばれた瞬間にぐーんと幸せボルテージが上がるのがわかる。スプーンを入れるのを躊躇ってしまうけど、冷めないうちに一口頬張ってみれば、いわゆるオムライスの域を超えた贅沢な味わいに頬が緩むはず。

さらにここのお店は、ホテルラウンジ並みのサービスが素晴らしい。絶妙な距離感と親近感でサービスしてくれるから、緊張して味が分からなかったなんて事にはならないし、接客がその時間をさらに特別感のあるものにしてくれる。大正14年から受け継がれる《香味屋》の洋食は、まさにクラシックと呼ぶにふさわしいのかも知れない。オムライス¥2200

[レストラン香味屋]

住所
東京都台東区根岸3-18-18
時間
11:30~22:00(毎週水曜、12月31日~翌年1月1日、2日は休み)
TEL
03-3873-2116

Asano

[あさの]

街のうなぎ屋《あさの》でふっくらうなぎを手頃に頂く。

どんなお店であれ、値段と味のバランスが良いお店は通う価値があるもんだ。都立大にある歴史ある鰻屋《あさの》もそんな店のひとつ。ただでさえ、ここ最近のうなぎの高騰で値上げを余儀なくされているお店が多い中、《あさの》では、愛知や九州などから仕入れた上等なうなぎが、手の届きやすい価格で提供されている。夫婦で切り盛りしているからこそのコストパフォーマンスの高さと、これぞ “街のうなぎ屋さん” といった入りやすい雰囲気が嬉しい。

オーダーを受けてから蒸して、炭火をうちわでパタパタとあおいで焼きあげる。厨房をのぞくとそんな光景が広がっていて、テーブルに届くまでの時間もなんだか贅沢だ。時間を掛けた焼きは香ばしくてタレとの相性も言うことなし。柔らかくてふっくらとしたうなぎには山椒を一振りして頂くのがおすすめ。

「そろそろ歳だし、そんなに長くはやれないかもなぁ」と店主。それでも常連からのエールを受けながら今日も厨房に立っている。うなぎの敷居を下げてくれる貴重なお店には、たまに立ち寄りたくなるほっとするあたたかさが溢れている。うな重(松)¥3470

[あさの]

住所
東京都目黒区中根1-3-17 パピルス都立大1F
時間
11:30~14:00, 17:00~21:00、月火休
TEL
03-3723-0562

Bondy

[ボンディ]

もはや “フレンチ” な《ボンディ》の欧風カレー。

有名カレー屋がひしめくカレーの聖地・神保町の中でも、常に行列の絶えない人気店が《ボンディ 神保町本店》。欧風カレーのパイオニアらしく、どこまでもクラシックなルックスがかっこいい。そんな逸品の風味は、秘蔵のスパイスをブレンドして生み出されている。パッと見、とことんシンプルに見えるカレー、実は豊富な乳製品と何種類もの野菜・フルーツをすり合わせてとろけるような旨味を引き出しているんだとか。能ある鷹は爪隠すなんて言うけど、これもベーシックな見た目の中にたくさんのこだわりが隠れている。ライスにソースが染み過ぎないように、ソースはシルバーのカレーポットに入れて提供されているのも、クラシックでなんだか嬉しくなる。

《ボンディ 神保町本店》のカレーは、実はフランス料理のソースをベースに作られている。その味は、究極まで敷居を下げたフレンチと言っても良いかも知れない。 不思議な甘さの中に辛さが秘められた極めつきのおいしさは、並んででも味わう価値がありそうだ。ビーフカレー¥1500

[欧風カレー ボンディ 神保町店]

住所
東京都千代田区神田神保町2-3 神田古書センター 2F
時間
11:00~20:00(月~木)、11:00~20:30(金)、10:30~20:30(土日祝)
TEL
03-3234-2080

KOMAKATA Dozeu

[駒形どぜう浅草本店]

どぜうなべをつつけばそこはもう江戸時代。

クラシックな食べ物と聞いて思いつく料理は数あれど、どぜうなべが出てくる人は少ないかも知れない。どじょうを丸ごと煮込んだ下町グルメとして江戸時代に人気だったどぜうなべは、まさに日本のクラシックな一品。今では珍しくなったどぜうなべを食べるなら、創業220年になる浅草の《駒形どぜう浅草本店》一択で間違いない。

今でも当時と変わらない調理法を守っている「駒形どぜう浅草本店」は、生きたどじょうにお酒をかけて酔わせてから独自の下ごしらえをする。運ばれてくる時にはすでに火が通っているから、お好みでのせたねぎがしんなりしたら食べごろ。鍋が焦げないように小まめに割下を差しながら、山椒と七色を振って、ネギをどさっと乗せながら食べるのが乙だ。ちなみに元々「どぢやう」と表記していたのを、初代越後屋助七が “四文字では縁起が悪いから” という事で「どぜう」になったんだとか。そんな話を聞きながら、江戸っ子よろしく粋な「どぜうなべ」を頂くとしよう。どぜうなべ¥2100

[駒形どぜう浅草本店]

住所
東京都台東区駒形1-7-12
時間
11:00~21:00(L.O.)、年中無休(大晦日と元日は休業)
TEL
03-3842-4001