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最近リリースされた音楽の中から気になる5枚をピックアップ。

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Murao Yasuo

BEST DISC OF THIS MONTH

ステラ・ドネリー『FLOOD』

まるで短編小説のようにユニークな語り口が魅力

オーストラリアから登場したシンガー・ソングライター、ステラ・ドネリー。彼女が注目を集めたのは、友達のレイプ被害を題材にしたシングル「Boys Will Be Boys 」だった。

この曲は#MeTooムーヴメントのアンセムになり、ステラは新世代のシンガー・ソングライターとして海外でも人気を集めた。そんななか、2019年に行われた初来日ツアーは即完! 日本の音楽好きからも愛されるステラの新作が完成した。今回は旅をしながら曲を書いたとか。彼女はフェミニストの闘士ではなく、自分が感じたことを歌いたいだけ。親しみやすいメロディーとひねりが効いたポップ・センスを併せ持った彼女の歌は、ウィットに富んでいてユーモラス。1曲1曲が短編小説のようで、彼女のユニークな語り口をたっぷりと楽しむことができる。

ステラ・ドネリー

オーストラリアはパース出身のシンガーソングライター。大学で音楽を学んだ後、ソロで活動しながら、Bells RapidsやBoat Showのギタリストとしてもプレイ。2017年にリリースしたシングル「Boys Will Be Boys」でオーストラリアの音楽見本市、Bigsound 2017のリーバイス・ミュージック・アワードを受賞。

その他のおすすめはこの4枚!

リッキ・リー『EYEYE』

手作りサウンドと甘美な歌声

スウェーデンのシンガー・ソングライター、リッキ・リーの新作は、スタジオを使わずに自宅で録音。デジタル機材を使用せず、安いマイクで歌声を録るなど、ローファイな環境にすることで「ドラッグをやりながらヴォイスメモを聞いているような親密な音楽」にしたかったとか。アナログ・シンセを使った手作りのサウンドは幻想的で、そこにリーの甘美な歌声が漂う。収録曲全曲にミュージック・ビデオを制作するなど、彼女らしいアート・センスを感じさせるアルバム。


ビーバドゥービー『Beatopia』

イギリスで注目を集めるニューカマー

フィリピンで生まれてロンドンで育ったビー・クリスティによるソロ・ユニット。2019年にNMEアワードで新人賞を受賞。デビュー・アルバム『Fake It Flowers 』は全英チャート初登場8位を記録するなど、イギリスで大きな注目を集めている彼女の新作は、The 1975のメンバーを始め多彩なゲストが参加。ギター・ロック、サイケ・ポップ、フォーク・ソングなど、前作以上にバラエティ豊かな曲が並ぶ。そんななか、どこか夢見るようなビーのキュートな歌声が魅力的。


シー& ヒム『Melt Away: A Tribute To Brian Wilson』

ポップス界のレジェンドをカヴァー

『(500)日のサマー』などで知られるハリウッド女優、ズーイー・デシャネルと、シンガー・ソングライターのM.ウォードが結成したユニット。音楽が大好きで知識も豊富なズーイーが新作の題材に選んだのは、ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソン。二人はブライアンの名曲を新しいアレンジでカヴァー。原曲がもつ繊細で美しいメロディーを大切にしながら、ドリーミーな世界を生み出した。そんな2人の愛に応えて、ブライアンがゲストで参加。


ビーチ・バニー『Emotional Creature』

Z世代に人気のロック・バンド

大学でジャーナリズムを学んだリリー・トリフォリオを中心に、2015年にシカゴで結成されたバンド、ビーチ・バニー。「Prom Queen」がTikTokでバイラルヒットを記録して、Z世代のリスナーを中心に人気を集めるなかでセカンド・アルバムを完成させた。歯切れが良いパンキッシュなギターにキャッチーなメロディーが乗った歌は、親しみやすくてエモーショナル。疾走感溢れるバンド・サウンドに乗って、リリーが伸びやかな歌声を聴かせてくれる。