WE NEED GOOD CINEMA 今月のおすすめ映画
クルーエル読者におすすめしたい新作映画をご紹介。映画は明日へのヒントが詰まった指南書です。
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- Murao Yasuo
Falcon Lake『ファルコン・レイク』
湖で出会った少年少女
フランスからカナダにバカンスで来た13歳のバスティアン。母の友人の娘で3つ年上のクロエと久しぶりに再会したバスティアンは、いつの間にか大人びた彼女に惹かれていく。幽霊がでると噂される湖を舞台に、子供と大人のはざまで揺れ動く少年と少女を描いたひと夏の物語。原作はフランスのコミックで、女優のシャルロット・ル・ボンが監督に初挑戦。16ミリのフィルムで撮影したノスタルジックな映像が、2人だけの世界を繊細に浮かび上がらせていく。
『ファルコン・レイク』8月25日(金) より渋谷シネクイントほか全国でロードショー監督・脚本:シャルロット・ル・ボン出演者:ジョセフ・アンジェル、サラ・モンプチ、モニア・ショクリほか配給:パルコ© 2022 – CINÉFRANCE STUDIOS / 9438-1043 QUEBEC INC. / ONZECINQ / PRODUCTIONS DU CHTIMI
Asteroid City『アステロイド・シティ』
砂漠の街は大騒ぎ
ウェス・アンダーソン監督の新作は、50年代のアメリカが舞台。砂漠の小さな街、アストロイド・シティにやってきた戦場カメラマンのオーギーと子供たち。街にはグラマラスなハリウッド女優やジュニア宇宙科学賞を受賞した科学好きの子供達がいた。そこに突然、宇宙人がやってきて街は大混乱! というお芝居。それを書いた作者や役者の物語、という二重構造の仕掛けが面白い。パステル調の色彩。箱庭のような街の風景など、ウェスらしい美意識も健在。
『アステロイド・シティ』9月1日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、渋谷ホワイト シネクイントほか全国でロードショー監督:ウェス・アンダーソン出演者:ジェイソン・シュワルツマン、トム・ハンクス、スカーレット・ヨハンソンほか配給:パルコ ユニバーサル映画© 2022 Pop. 87 Productions LLC
Corsage『エリザベート 1878』
自由を求めた皇妃
19世紀のヨーロッパで、宮廷随一の美女と噂されたオーストリアの皇妃、エリザベート。40歳を迎えた彼女は美しさを保つことにプレシャーを感じ、自分が王の飾り物に過ぎないことに苛立ちを感じていた。そこで彼女はある計画を思いつく。男社会に反旗を翻した皇妃をヴィッキー・クリープスが熱演。細部までこだわった美術や衣装。フランスのミュージシャン、カミーユが手掛けたサントラなど、モダンな語り口で自由を求めた一人の女性の姿を描き出す。
『エリザベート 1878 』8月25日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国でロードショー監督・脚本:マリー・クロイツァー出演者:ヴィッキー・クリープス、フロリアン・タイヒトマイスター、カタリーナ・ローレンツ、マヌエル・ルバイ、フィネガン・オールドフィールド、コリン・モーガンほか配給:トランスフォーマー、ミモザフィルムズ© 2022 FILM AG - SAMSA FILM - KOMPLIZEN FILM- KAZAK PRODUCTIONS - ORF FILM/FERNSEHABKOMMEN-ZDF/ARTE - ARTE FRANCE CINEMA
CINEMA HOLIC 映画好きに贈る今月のオススメ
『ウルリケ・オッティンガー「ベルリン三部作」』再評価高まるドイツの鬼才その代表作を特集上映
70年代から活動するドイツの女性映画監督、ウルリケ・オッティンガー。近年、その独創的な作品が再評価され、ヨーロッパを中心に大規模なレトロスペクティヴが開催されるなか、日本でも代表作3作品が特集上映される。なかでも注目したいのは、彼女の代表作で日本初公開となる『アル中女の肖像』(79年)だ。ただひたすら酒を飲むためにベルリンにやって来た一人の女性。彼女は女性ホームレスやタキシードを着た謎の小人など、奇妙な人々と出会いながら飲み歩く。ヒロインを演じるのは、当時、西ドイツのカルチャー・シーンのアイコンだったタベア・ブルーメンシャインで、彼女は衣装も担当。貴婦人のようにドレスアップしたタベアが、荒廃したベルリンを酒瓶片手にさまよう姿はデカダンな魅力に満ちている。また、ドイツのパンク・ロッカー、ニナ・ハーゲンが出演して歌を披露するなど、個性豊かなキャストが参加するなか、オッティンガーは、脚本、監督、美術、撮影など一人で何役もこなして、シュールでユーモラスなアート感覚に溢れた映像世界を作り上げている。今回の特集上映では、そのほかにヴァージニア・ウルフの幻想小説を題材にした『フリーク・オルランド』(81年)。伝説的なスーパーモデル、ベルーシュカを主役に迎えた大作『ダブロイド紙が映したドリアン・グレイ』(84年)の2本を上映。フェミニズムやLGBTQ的な視点で語られることも多く、今後ますます注目を集めそうな鬼才の作品に触れる絶好の機会だ。