世界的映画監督が探し求めた、次世代のアジアヒロイン。

モデルから世界的な女優へ。初主演映画の撮影を終えた“イマ”を語る。

※2018年11月発売/vol.44からの記事です。


 ウォン・カーワイ、ガス・ヴァン・サント、ジム・ジャームッシュなど、名だたる監督とコラボレートしてきた撮影カメラマン、クリストファー・ドイル。彼が監督を務めた映画『宵闇真珠』は、香港を舞台にした幻想的なラヴストーリー。そこでヒロインに抜擢されたのは、香港出身のモデル、アンジェラ・ユンだ。独自の美意識をもつドイルが認めただけあって、どこか神秘的で、透明感がある美しさは、まさに次世代のアジアン・ビューティー。モデルとしてデビューしたきっかけを、彼女はこんな風に振り返ってくれた。

 「大学の時、友達が自費出版の雑誌を作っていて、〈表紙を飾るモデルにお金が出せないから、やってくれない?〉って相談されたんです。それで手伝ったら、それをいろんな人が見てくれたみたいで、〈オーディションを受けてみない?〉って声がかかるようになったんです」

 香港の仕事以外に、峯田和伸が率いるロック・バンド、銀杏BOYZのジャケットのモデルをやったり、シュウ ウエムラのアンバサダーを務めたりと、日本での仕事もこなしてきたアンジェラ。そんななかで『宵闇真珠』は、彼女の大きな転機になる作品だ。映画で彼女が演じたのは、香港の古い漁村で暮らす少女。彼女は病気のために太陽の光を浴びることができず、昼間は自由に出歩けない。いつもひとりぼっちな彼女は、異国から来た旅人と出会ったことで少しずつ変わっていく。

 「脚本を読んだ時、ヒロインの少女はとても孤独なんだろうな、と思いました。その一方で、世間から隔離された状態で成長した彼女は外の世界に対する好奇心があって、今いるところから開放感されたいという思いが強い。だから、孤独でありながら、とても豊かな内面を持っているんじゃないでしょうか。演じていくうえで、そういうところが出せたらいいな、と思いました」

 子供の頃、街から離れたところに住んでいたアンジェラは、学校で都会の子供達の話題についていけず、映画の少女と同じようにいつも疎外感を感じていたとか。そんな経験が、今回の役作りに活かされているに違いない。ドイルからは「演技しようとせず、感じたままにやればいい」と言われたというアンジェラは、「映画の少女と普段の私の雰囲気に共通したものがあるから、それを壊さないでほしい、ということだと思って、なるべく自然に演じました」と撮影を振り返る。そして、相手役の旅人を演じたオダギリジョーについては「とても安心感を与えてくれる大先輩でした」と感謝。日本語で「チョー、カッコイイ!」と微笑んだ。そんななかで、印象に残ったシーンを訊ねると。

 「オダギリさんと2ショットで鏡の前に立つシーンです。そこにはセリフがありませんが、ライトの色が変わっていく。それが二人の心の変化をリアルに描いていると思いました」

 映画のヒロインと同じように繊細な感受性を持ったアンジェラは、都会よりも映画の舞台になった漁村のような静かな村が好きらしい。最近では台風に襲われた離島に行って、倒れた木を片付けるボランティアに参加した。

 「倒れた木を使って、島の喫茶店のオーナーが椅子を作るんです。捨てるなんてもったいないでしょ? 〈手伝ってくれたお礼に〉って、オーナーからお土産に、リサイクルで作った小さな椅子をもらいました」

 そう言って、嬉しそうに携帯の写真を見せてくれた。『宵闇真珠』をきっかけに、もっと女優の仕事をやってみたいと語るアンジェラ。「みんなが協力して、ひとつの作品を作っていくことの素晴らしさを実感したから」だという。少女が旅人を通じて世界を知ったように、アンジェラはこの映画を通じて世界に羽ばたいていくに違いない。

『宵闇真珠』

監督:ジェニー・シュン
監督/撮影:クリストファー・ドイル
出演:アンジェラ・ユン、オダギリジョーほか
配給:キノフィルムズ
(C)Pica Pica Media

アンジェラ・ユン(女優/モデル)
1993年 香港生まれ。世界的映画監督のクリストファー・ドイルが《宵闇真珠》のヒロインを何年も探し求めて発見したのが彼女だった。シャネルの広告や、シュウ ウエムラのアンバサダーを務めるなど、モデルとしても大活躍している。地元の香港では“文青女神” と呼ばれ、絶大な人気を誇っている。

photograph:Otsuka Kazuhiko、styling:Masaru Kato、hair&make-up:Maeda Sara、interview&text:Murao Yasuo