FEATURE PEOPLE :
コンピュータ・マジック/ダニエル・ジョンソン
気になるあの人に会いに行く
『ほら、人間っていろんな面を持っているでしょ?
決められた箱のなかに閉じ込められたくないから』
― コンピュータ・マジック/ダニエル・ジョンソン(ミュージシャン/アーティスト)
NY・ブルックリン在住。「コンピュータ・マジック」はDJ、グラフィックデザイン活動と並行して活動を始めたプロジェクト。その活躍は日本でも話題を呼び、テレビCMの音楽に起用されるなど、今後も目が離せない注目の次世代アーティスト。
official site:http://www.thecomputermagic.com
NYの〈宅録ガール〉が見せる様々な顔
作詞作曲はもちろん、レコーディングも機材を揃えた自宅でひとりでこなす。そんな〈宅録ガール〉を代表するアーティストのひとりが、NYを拠点に活動するコンピュータ・マジックことダニエル・ジョンソンだ。〈ダンジー〉という愛称で親しまれる彼女は、グラフィックデザイナー、DJ、ブロガーなど様々な方面で活躍している。ダンジーがライヴで来日したのは記録的な暑さが続く7月のこと。ライヴ前、楽屋に彼女を訪ねた。
「これまで日本には何度か来たけど、こんなに暑いのは初めて。日本にいる間に体重も減ったんじゃないかな(笑)。でも、日本は大好きだから、ホテルにいるのはもったいなくて昨日も10時間くらい原宿を歩き回ったの。今回、女性のドラマーと二人で来日したんだけど、彼女は日本は初めてだから、〈じゃあ、ショッピングを楽しもう!〉ってことになって。これまで見たなかで、いちばん幅の広いジーンズを買ったわ」
暑さに負けず、日本滞在をめいっぱい楽しんでいるダンジー。そういえば、未発表曲やアルバム未収録曲を集めた新作『スーパー・レア』には、「オール・アローン・イン・トーキョー」なんていうタイトルの曲もある。
「これは2013年くらいに、初めて東京に行って帰ってから書いた曲。初めて訪れた場所で抱く気持ちを曲にしようと思って。特にインストの部分にそれが現れていると思う。東京のホテルに泊まっている時、どうしても眠れなくて、夜中にヘッドフォンをして音楽を聴きながらコンビニに買い物に行った時の気持ちとか」
ソフィア・コッポラの『ロスト・イン・トランスレーション』を思わせるような雰囲気がありますね、と感想を伝えると「それ褒め言葉ね。ありがとう」と微笑んだ。アーティスト名からイメージされるように、コンピュータ・マジックはシンセサイザーをベースにしたエレクトロニックなポップ・ソングが特徴。
- 『Super Rare』
コンピュータ・マジック
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宅録するようになったきっかけを、彼女はこんな風に振り返ってくれた。「ある日、ネットからシンセのソフトウェアをダウンロードして曲を作ってみたら、それがとても面白くて。本物のシンセを使って曲を作りたいと思うようになったの。そのうちに、ミックスに仕方も勉強するようになって。最初はミュージシャンになるつもりなんて全然なくて、ひとりで遊んでいるだけだったから、今こうして日本でライヴをやるなんてクレイジーなことだと思う(笑)」
そういえば、『スーパー・レア』のジャケットで、水着姿の彼女がサーフボードのように抱えているのはオムニコード。彼女がお気に入りのシンセサイザーだ。
「シンセサイザーは最近のデジタルな音はあまり好きじゃなくて、アナログ・シンセのの温かな音色が好き。オムニコードもエレクトロニックなハープみたいな音が面白いの。でも、シンセは高価だからハマると危険!(笑)」
そして、珍しく水着を着ていることについて、こんな説明も。「デビューした頃、私のトレードマークは宇宙服で、よく宇宙服を着て写真を撮っていたの。でも、今回は気分を変えて、宇宙服を脱いで肌を見せようとと思って。ほら、人間っていろんな面を持っているでしょ? 私も常に違う面を見せていきたいと思ってるの。だから、髪も金髪から黒に染めたし、思い切って名前も変えようかって考えたくらい。決められた箱のなかに閉じ込められたくないから」
ヴァージョンアップし続けるコンピュータ・マジック。今度会った時には、また新しい顔を見せてくれるに違いない。
CLUÉL vol.42掲載
- interview & text:Murao Yasuo
- photograph:Otsuka Kazuhiko