FEATURE PEOPLE :
Nancy & Nadia(NACH)

気になるあの人に会いに行く

 

『私たちはNACHのジュエリーを通じて、自然の美しさと素晴らしさを伝えたい』
― ナンシィ/ジュエリーデザイナー、ナディア/セールス

 

NACH

デザイナーはNancyとNadiaの姉妹。フランス人の父とタイ人の母の元に生まれ、幼少期にはそれぞれの国を行き来する生活を送る。父は、ヨーロッパの伝統工芸のひとつである陶器の、ミニチュアアニマル製作活かし《NACH》を2011年に立ち上げる。主にデザインを担当するのは妹のNancy。姉のNadiaは大手企業で積んだ経験を生かし、ビジネス面を担当。豊かな感性とアイディアで、ウィットに富んだコレクションを展開。www.nachbijoux.com

 

手に取った人のハートをウキウキさせて、思わず微笑ませてしまう魔法のジュエリー。それが、ナディアとナンシーの姉妹が作るNACH(ナッシュ)のジュエリーだ。ナディア曰く、ふたりはまさに「動物たちが与えてくれるハッピーな気分を分かち合うため」に、このブランドを7年前にスタート。

モチーフは動物で素材は磁器というNACHのふたつのアイデンティティは、彼女たちの生い立ちと深く関係している。フランス人の父は伝統的な磁器のミニチュア・アニマルを作る職人として知られる人物で、彼のアトリエがあるトゥルーズと、母の故郷タイの間を行き来しながら育ったふたりは、どちらの国でもたくさんの動物に囲まれていたそう。「フランスの家には馬や牛やロバやウサギがいて、タイの家では3頭の象に加えて、サル、オウム、魚もたくさん飼っていたわ。そんなわけでふたりとも、ブランドを始めるずっと前から、服でも雑貨でも動物柄のものが大好きだった。しかも父の仕事をいつも手伝ったりしていたから、ある日ふと閃いたの、“ジュエリーを作ったら楽しいんじゃない?”って」。(ナンシィ)

そこで、グラフィック・デザインを学んだ妹のナンシーがデザインを、姉のナディアがビジネス面を担当し、父の助言を得て、手探りで商品作りを始めたふたり。ナンシーが描いたデッサンを元にした磁器の動物は、まず素焼きをしてから彩色し、さらに焼き付けて、釉薬をかけて再度焼成……と、約1週間に及ぶ工程を経て誕生するのだとか。

「華奢なようで強度に優れていて、ちゃんとした知識と技術と経験を受け継いで作っているだけに、精巧かつ上質なの。それにNACHの動物はコミカルではなくて、あくまでリアル。ディテールや表情や質感にすごくこだわっているわ」。(ナンシィ)

そして初めて出展した展示会で早速注目を浴びて、オーダーが殺到。瞬く間に成功を収めた。成功の理由? クオリティもさることながら、何よりも独自性にあるというのが、ナディアの意見だ。「こんな風に磁器を使ったジュエリーはほかになかったからこそ、大勢の人に気に入ってもらえたんだと思うの。展示会場で“うまく行くぞ”と確信した私は、当時勤めていた会社をさっさと辞めてしまったわ(笑)」。(ナディア)

また最初はシンプルだったデザインは、金属やビーズや羽根といった異素材と組み合わせるなどして、どんどん凝ったものに進化。アイテムもアパレルやバッグへと広がり、もちろん動物の種類も増える一方で、今やヒトデやテントウ虫に至るまで、自然界を広く網羅している。当初は姉妹のアイデアに懐疑的だったという父は、今では全面的に関わっているそうだ。

「母も手伝ってくれているから、NACHは本当の意味でファミリー・ビジネス。私たちふたりはほぼ毎日一緒に過ごしているんだけど、今のところ仲良くやっているわ。言いたいことはなんでも言えるし、お互いがいてこそ成立するブランドだもの。私には素敵なジュエリーを作ってくれるナンシーが必要で、ナンシーはそれを人々に届ける私を必要としているのよ(笑)」。(ナディア)

そんなふたりが重視しているのは、ただ人々をハッピーにすることだけではない。自分たちに無限のインスピレーションを与えてくれる自然への愛情も、NACHのジュエリーに託した大切なメッセージだ。「今の世界を見ていると、自然を巡る状況は本当に悲しいでしょ? だから私たちは自然の美しさ、素晴らしさを伝えたいし、人間も動物も共存できるより良い世界、より良い環境を作りたい。そういう想いが伝わればうれしいわ」。

 


 

CLUÉL vol.41掲載

  • interview & text:Shintani Hiroko
  • photograph:Otsuka Kazuhiko