FEATURE PEOPLE :
ステイシー・マーティン

気になるあの人に会いに行く

 

『どんな人と仕事をするか、というのが重要なんです』
― ステイシー・マーティン/女優

 

ステイシー・マーティン

1991年1月1日生まれ。7歳から13歳までを日本で暮らす。その後英国で演技を学び、ラース・フォン・トリアー監督『ニンフォマニアック』でスクリーンデビュー。以降、数々の話題作に出演する今大注目の女優のひとり。さらにモデルとして《MIU MIU》初フラグランスのキャンペーンガールにも起用され注目を集める。

 

60年代に映画の世界に革命を起こしたヌーヴェルヴァーグ。その中心的な存在だったジャン=リュック・ゴダール監督に愛された19歳の女子大生がいた。彼女の名はアンヌ・ヴィアゼムスキー。アンヌはゴダールから熱烈に求愛されて結婚し、ゴダールのミューズになる。当時、映画界を騒がせた二人の関係を追った映画『グッバイ・ゴダール!』は、アンヌの自伝小説を映画化したもの。そこでアンヌを演じたステイシー・マーティンはパリ生まれで、鬼才ラース・フォン・トリアー監督の『ニンフォマニアック』でデビュー。シャルロット・ゲンスブールが演じるヒロインの若い頃の役に抜擢されて話題を呼んだが、最近ではMiu Miuのフレングランスのモデルに起用されるなど多方面から注目を集めている。彼女はアンヌとゴダールの関係を、こんな風に語ってくれた。

「アンヌはゴダールと付き合うなかで本当の自分を見つけていったんだと思います。ゴダールと出会った頃、彼女は社会のなかで自分の立ち位置を見つけることができなかった。だからこそ、ゴダールのように自分を表現できる人に惹かれたんでしょうね。そして、ゴダールとの関係が壊れていくなかで、〈自分は何者なのか?〉と考えるようになっていった。私が美しいと思うのは、そうなってもアンヌのゴダールに対する愛やリスペクトが失われなかったことです」

60年代のパリといえば、五月革命と呼ばれた学生運動が盛り上がり、社会は大きく変わろうとしていた。ゴダールもまた過去の作品を否定して、新しい作風を生み出そうと苦しんでいた。そんなゴダールの姿がアンヌに影響を与えたのでは、とステイシーは考える。

「他人から見れば変わる必要がないくらい完成したスタイルを持っているゴダールが、必死で変わろうとしている。その様子を目の当たりにして、アンヌも変わろうとしたんだと思います。その結果、愛する男を諦めて自分の道を行くことを決意した。ゴダールと別れてから、彼女は女優業に邁進して、その後、作家になりますが、そうやって本当にやりたいことを見つけることができたのは、ゴダールとの関係が影響しているんじゃないでしょうか」

 

    「グッバイ・ゴダール!」
    公開中
    ©LES COMPAGNONS DU CINÉMA – LA CLASSE AMÉRICAINE – STUDIOCANAL – FRANCE 3.
    配給:ギャガ
    official site:http://gaga.ne.jp/goodby-g/

 

人との関係が自分を成長させる。それは彼女自身も実感していること。「友達であれ家族であれ、人間関係が自分を形作ってくれる。だからこそ、どんな人と仕事をするかというのが重要なんです」と彼女は言う。そんな彼女が女優になったきっかけは、ちょっとした好奇心だった。

「イギリスの大学に通っていたのですが、イギリスでは大学卒業前の一年間を〈ギャップ・イヤー〉と言って、自分が好きなことに挑戦するんです。私は演劇をやってみようと思って始めたら夢中になってしまって。そんな時に、『ニンフォマニアック』のオーディションを受けたら合格して無我夢中でやりました。大変だったのは撮影が終わってから。〈この後、役者としてやっていくのか?〉って真剣に考えました」

そして、彼女は女優として生きていくことを決意。アンヌのように自分の居場所を見つけた彼女にもう迷いはない。「監督や共演者、どんな人と一緒にやるかで映画の仕事は毎回違ってきます。それが私にとっては刺激的なんです。インスピレーションを与えてくれる監督や作品がある限り、女優の仕事は続けていきたいと思いますね」もしかしたら、彼女自身がゴダールのミューズになる日がくるかもしれない。

 


 

CLUÉL vol.40掲載

  • interview & text:Murao Yasuo
  • photograph:Otsuka Kazuhiko
  • hair&make-up:YOSHi.T (AVGVST)