FEATURE PEOPLE :
安藤サクラ

気になるあの人に会いに行く

 

『娘を見てると〈生きるってこういうことか!〉って思うんですよね』
― 安藤サクラ/女優

 

    カーディガン¥32000、カットソー¥19000/ともにMAURO GRIFONIl(ジャーナル スタンダード ラックス 表参道店 ☎︎03-6418-0900)、その他スタイリスト私物
安藤サクラ

1986年2月18日生まれ。東京都出身。07年に映画デビュー。近作に、映画『島々清しゃ』『追憶』『DESTINY 鎌倉ものがたり』、ドラマ『ゆとりですがなにか』など。映画『百円の恋』では「第39回日本アカデミー賞」で最優秀主演女優賞を受賞した。後期のNHK連続テレビ小説『まんぷく』ではヒロイン福子を演じる。

 

NHKの新しい朝ドラのヒロインに決まったことで話題の女優、安藤サクラ。個性派女優から国民的女優へと周りの見る目は変わっても、本人はいたって自然体。取材会場にリュックを背負ってフラリと現れ、話し始めて「あ、リュックおろして良いですか?」と微笑む。そんなやりとりにも、彼女の人柄が垣間見えるようだ。出産後初めての出演作となった『万引き家族』で彼女が演じるのは、古い民家に肩寄せ合って暮らす貧しい一家の母親、信代。今回、彼女は演技のことは何も考えずに撮影現場に向かったという。

「撮影中は、ずっとおおらかな気持ちでいようと思ったんです。ただ、(映画の)家族に会いに行こうと。演技をする時の感情とか相手との関係性とかは、現場で自然に育まれていくものに寄り添えば良かった。私が信代になっているかどうかは、ちゃんと監督が見ていてくれるっていう安心感がある現場だったんです」

一家にはある秘密があって世間から隠れるように生きているが、そこにはどこか懐かしく、暖かい家庭の雰囲気が漂っている。そして、家族の秘密がわかった時、観客は「家族って何だろう」と考えずにはいられない。簡単に善悪を決めず、映画を見る観客に考えさせる物語だけに、安藤も撮影が進むにつれて自分のなかで信代のイメージが変わっていったという。
「信代さんが良い人なのか悪い人なのか、最後までわかりませんでした、でも、彼女は必死こいて生きていて、そういう時、人は気持ち良い時間を過ごしているんだなって思ったんです。それは今、自分は仕事と育児の両方で必死こいて生きてて、それがすごく気持ち良いと感じているからわかるんですよね」

    「万引き家族」
    6月8日(金)よりTOHOシネマズ日比谷他にて全国公開
    ©︎2018『万引き家族』 製作委員会
    official site:http://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/

朝ドラに出演する関係で、いま娘と二人で大阪で暮らし始めた安藤。結婚するまでは実家暮らしで、結婚してからは夫の家族と暮らしていた彼女にとって、親子の二人暮らしは新鮮らしい。
「初めて自分のペースでまわしていける生活を送っていて、それがとても心地良いんです。今までの自分だったら、気がついたらだらしないほうに行ってたんですよね。〈あと2時間寝れるんだったら寝ちゃおう〉みたいなところがあったけど、娘を見てると〈生きるってこういうことか!〉って思うんですよ。娘はまだ小さいから〈生きて行く〉だけがテーマで、毎日、一生懸命生きてる。その姿を見ていると、私も一生懸命生きなきゃって思うんです」

映画では幼い子供達との共演シーンもあったが、やはり子供が生まれる前と後では、子供達と触れ合う気持ちに変化もあったという。
「うまく言葉では説明できないけいれけど、子供達と一緒にいる時の気持ちはこれまでと違いました。子供達は台本を一切読んでなくて、私の演技に素直に反応するんですよ。だから、どのシーンでも新鮮でしたね。

デビューしてから10年以上の年月が経ち、母親になった安藤。女優とういう仕事に対する向き合い方に変化はあったのだろうか。
「基本的な部分は変化していないけど、私自身は新しいものを見たり感じたりしたら変化するので、やっぱり変わっているんだろうなって思います。でも、変化は素直に受け入れたいと思っています。今回、撮影現場で休憩している時に、女子メンバーと〈整形するんだったらどこにする?〉みたいな話をしてたんですけど(笑)、私は整形したくてもしないと思うんですよ。顔がたるんでしわができても伸ばさない。歳をとったら、その時の自分の身体でできることを楽しみたいですね」

自分を偽らず、「必死こいて生きる」こと。安藤サクラの魅力は、そのシンプルな力強さにあるのかもしれない。

 


 

CLUÉL vol.38掲載

  • interview & text:Murao Yasuo
  • photograph:Otsuka Kazuhiko
  • styling:Hayashi Michio
  • hair&make-up:Hoshino Kanako