THE NEW STANDARD

新たなスタンダードを探る vol.06

定番品をスタンダードとするのならば、老舗の歴史ある普遍的なもの、誰でもが定番と思えるものに限る。そう捉えるのが通常の思考の流れだと言える。でも少し視点を変えるだけで、新たな価値のあるものに気が付くことになる。ファッションは刹那的だと思いがちだが、今もなおスタンダードが生まれているに違いない。

 


 

《マリ マロ》の作るシャツ

《マリ マロ》はフランスのシャツブランドである。そのブランドのスタートは2013 年にさかのぼる。デザイナーは女性で、ブランド名=デザイナーの名前となる。デザイナーの彼女は、(写真でしか見たことはないが)凛とした美しさと強さを兼ね備えた洗練された印象を持っていた。それもそのはず、前職はファッションのPR だという。その当時、周囲の人々に自身の独特なスタイリングやセンスを評価され、デザインをすることで自身を表現していきたいと感じたことをきっかけに、ブランドスタートを決意したという。そのスタイルや眼差しを見るに、その佇まいもとびきり魅力的で、特別だったのだとたやすく予想できる。そんな彼女がブランドをスタートするのは必然だったかもしれない。

    定番といえる小さなフリルが配された1枚。前たて部分や肩口に至るまで、繊細さが際立つのは縫製にもしっかりと妥協しない所以。1枚着るだけで凛としてとびきり美しいのがわかる。シャツ¥32000/MARIE MAROT

ブランド発足当初は、彼女のシグネチャーのようなハットや帽子と、中性的で居ながら女性らしいスタイルに似合うクラッチバッグの展開だった。その後、2015 年には定番となるノーカラーのシャツを発表し、現在はシャツのみの制作へと移行している。そのそぎ落とし、シンプルなデザイン、厳選された素材や計算されたシルエット、縫製の繊細さ、そこにメンズのテーラーリングを参考に中性的でありながら女性的な仕立ては、多くの目の肥えた女性の目に止まり、瞬く間に虜にした。さらにその美意識はすぐにフランスを代表する老舗《セントジェームス》、モードの中心にいる《マーク・ジェイコブス》のラブコールを得ることにまで至ったというのも納得出来る。

    小さなフリルで衿もと、肩口を彩った1枚。モデルが着用したものになる。ベーシックなシルエットでありながら華のある1枚。

ブランドの根幹とも言えるシャツとハットは、彼女のワードローブの中でも絶対に外せないアイテムであり、タイムレスでエレガントであると考えているのだという。その考えはシャツやハットの持つ本質をしっかりと見つめ、深く考察しているから出る説得力のあるキーワードだ。シャツは紳士の服のイメージが強い中、彼女の作るシャツは女性のために生まれたシャツだ。だが奇をてらったデザインがあるわけでも、華美に彩られたわけではない。しかし着るだけで美しく、彼女のように凛とした女性で居られる。毎シーズン選ぶ色彩も絶妙でまた美しい。多くの柄や素材で展開をしないのも、丁寧にしっかりとモノ作りを考えていればこそ、しっかりと選び抜かれ厳しい審美眼により許可された証だと言えるだろう。

    定番として長く製作されるデザインの1つ。ごく細かなステッチの入ったプルオーバータイプのシャツ。シャツ¥32000/MARIE MAROT

今シーズンは初のシルク素材を用いた新作も展開し新たな表情や着心地を生み出した。もしかすると可能性はこれからも広がっていくのかもしれない。ただ、真摯に見つめ作られる美しい《マリ マロ》のシャツは女性のための長く愛したいシャツだと言える。きっと彼女同様にお気に入りのワードローブの1着になることは間違いない。

 

OTHER
SHIRTS
LINE-UP

    後ろボタンになったスタンドカラーのシャツ襟はカラーの太さのまま、後ろ身頃にリボンとして垂れる。シャツ¥42000/MARIE MAROT

 

    今シーズン新たな素材がバリエーションとして加わった。パターンは同様に、体に沿う柔らかな素材感で新たな表情を生んだ。シャツ¥32000/MARIE MAROT

 

    モデル名を見るとわかるのだが、全て女性の名前を冠したモデル名となっている。それを知るのも密やかな楽しみ。シャツ¥32000/MARIE MAROT

お問い合わせ先:ディプトリクス(ショールーム) 03-3409-0089

 


CLUÉL vol.28掲載
※制作時の情報につき、現在は変更になっている可能性がございます。

  • photograph:Kojima Yohei(model),Otsuka Kazuhiko(items)
  • styling: Kiyomiya Mio
  • hair&make-up:Onishi Akemi
  • model:Gisele Fox