FEATURE PEOPLE : Soko

気になるあの人に会いに行く
「自分の言いたいことを言う音楽と、まったく違う世界に身を委ねる映画。
この2つをやることでバランスがとれているから、どちらかひとつを選ぶことなんてできないの」

― ソーコ(ミュージシャン・女優)

Soko

フランス・ボルドー生まれ
16歳でパリに出て演劇学校などに通い、その後ミュージシャンに転向。2007年のミニアルバム『NotSoKute』で人気に火がつき、《ステラ・マッカートニー》などのショーで使用され頭角を現す。本作でセザール賞最優秀女優賞、リュミエール賞女優賞にノミネート。女優としても更なるブレイクが期待される注目株。
instagram : @ sokothecat

シンガーソングライターとして、女優として、情熱を注ぐこと

「ちょっとお腹が空いちゃって。食べながらでもいい?」
 そう言って照れくさそうに微笑むと、ソーコはリンゴを齧った。ソーコことステファニー・ソコリンスキは、フランスはボルドー出身のシンガー・ソングライター。最近は女優としても活躍しているが、最新主演作『ザ・ダンサー』で彼女が演じるのは、実在したダンサー、ロイ・フラーだ。

  • 『ザ・ダンサー』より、ロイ・フラーを演じるソーコ

 
 19世紀のアメリカに生まれたフラーは、子供の頃から女優になることに憧れていた。ある日、舞台で即興で踊ったダンスが注目を集めた彼女は、独自のダンス・スタイルを生み出して、ダンサーとしての道を歩むことを決意。パリのオペラ座の舞台に上がることを目指してフランスへと向かうが、身体を酷使する彼女のダンスは次第に身体を蝕んでいく。自分に過酷な試練を与えてでもダンスを極めようとしたフラーを、ソーコは身近に感じたらしい。
 「情熱を持って創作活動をしているアーティストなら、誰もがロイを身近に感じると思うわ。彼女はダンス以外にも、照明の当て方を考えたり、舞台演出を考えたりするマルチメディア的な発想を持ったアーティストだったの。私も音楽だけではなくて、ミュージック・ビデオを撮ったり、お芝居をしたり、文章を書いたり、フラーと同じようにすべてのエネルギーをクリエイションに注ぎ込んでいる。そのおかげで自分の生活がおろそかになってしまうところも彼女と似ていると思うわ。マドンナも彼女に興味を持ったみたいで、この映画を見たマドンナが〈会いたい〉って連絡をくれて、彼女のビデオに出演することになったのよ」

  • 『ザ・ダンサー』より、リリー=ローズ・デップ

 撮影のため、フラーと同じように、毎日、筋肉痛に耐えながらダンスを練習したソーコ。
「苦痛に耐えながらダンスをすることを通じてロイを理解することができたわ」と彼女は言うが、そうやって仕事に夢中になる姿はフラーそのものだ。映画では、そんな努力型のフラーと対照的な天才肌のダンサー、イザドラ・ダンカンが登場する。演じるのはジョニー・デップの娘、リリー=ローズ・デップ。男性的で力強いソーコと、女性的でしなやかなリリーの共演も本作の見どころのひとつだ。
 「ロイは仕事中毒で舞台に立つために練習を重ねるタイプ。一方、イザドラは練習は嫌いで、まるで呼吸をするように踊る。イザドラはロイがどうしても持つことができなかった女性的な優美さを持っていたの。でも、ロイはイザドラと知り合うことで、コンプレックスを抱えていた自分を受け入れることができた。二人は影響を与え合っていたのよ」

  • 『ザ・ダンサー』より

 身体がぼろぼろになっても、フラーは夢を目指して突き進んだ。ソーコ自身も創作活動にすべてを捧げている。「9年前からロサンゼルスを拠点にしているけど、カナダ、イタリア、ロンドン、日本といろんなところを駆け回っていて常に仕事をしてる。今の私は家がない状態なの(笑)」という彼女にとって、もし〈家〉があるとするなら、彼女の出発点となった音楽だろう。
 「私にとって音楽は最も純粋なもの。音楽を作るというのは、自分の感情を写真に撮るようなものなの。とても孤独な作業で、自分自身の苦しみや迷いなんかに一人で向き合わないといけない。それに比べると、別人になりきる映画は現実逃避ね。自分の言いたいことを言う音楽と、まったく違う世界に身を委ねる映画。この2つをやることでバランスがとれているから、どちらかひとつを選ぶことなんてできないの。食べるのも寝るのも大切なのと同じようにね」
 そして、取材が終わるまでにリンゴをひとつ食べ終わったソーコ。食べたり寝たりするのと同じくらい創作活動が人生の一部になっている彼女にとって、『ザ・ダンサー』はとびきり美味しいリンゴだったのかもしれない。

  • interview & text:Murao Yasuo
  • photograph:Arimoto Masahiro
ABOUT MOVIE

『ザ・ダンサー』
6月3日より、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、Bunkamuraル・シネマほかにて全国順次公開
配給:コムストック・グループ
http://thedancer.jp/